斬新がひた隠す凶貌
神々の指紋(上・下)/グラハム・ハンコック/小学館文庫
発売当時、自分は見向きもしなかった問題作。どうしてあんなに流行ったのか、今になって知りたくなったので読んでみました。勿論、この本が嘘で塗り固められた偽物だということを知っていての選択です。2冊で210円という数字に魅惑されただけでもあります。
ピリ・レイスの南極の地図に始まり、エジプトのピラミッド、スフィンクスの建造年代に関する考察を通り、最後はお決まりの終末論。自分が他学者から『ありえない』と否定されると怒るわりに、当人はやたら古代人、南米土着の民をさげすんで『高度な技術は彼らの文明ではありえない』と臆面もなく言い放つ。そしてその都度、髭面白人男性の影をちらつかせる。だいたいが神のごとき白人の御業。それらは全て果て無き推論の迷宮。推論と改ざんで理を転がしてゆけば誰もが思うままの結末に辿り着けるという、或る意味で良質な参考書。執拗な『たぶん~だろう』にうんざりする一冊。痛ましい虚栄の塊。本物になれなかった人の憧れの物語。
たぶんこのひとはネオ・アトラス(未開世界を航海し、世界を造る箱庭創造ゲーム。情報の取捨選択次第で巨人族の存在した世界になったり、日本が黄金の国になったり、アトランティス大陸を発見したりできる。)のへヴィユーザーだろう。
科学はたくさんの非科学的なひらめきから成り立っている。非科学的であるという反論をする者は科学の歴史を見ていない通説の奴隷。見栄とか執着とかを捨てて、ただ知ることにのみ従順であればきっとこのひとにもチャンスはくる・・・かもしれない。
で。
結局なんでコレが売れちゃったのかについては判りませんでした。
とりあえずこの本に対応する反論本もあるらしいので、そちらもできれば読んでみたいです。


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